哲学者エピクロスは快楽主義を説きました。
快楽主義といえば、現在では当時とは異なる意味で使われています。
すなわち、食べる快楽や性的快楽などの快楽を幸福ととらえて、それを生み出す行為を正しいとみなす主義として使われています。
しかし、エピクロスが快楽主義を説いた真の目的は、心の平静を得ることでした。
エピクロスは肉体的な快楽を求めても幸せになれないと説いています。それよりも心の平静を得たほうが何倍も幸せだと考えたのです。
では、心の平静を得るにはどうすればいいでしょうか。
これに関してエピクロスは「隠れて生きよ」と言います。
といっても物理的な意味でいっているわけではありません。
この言葉が意味するところは、あまり多くの物事にかかわるがあまり心が乱されるのを避けなさい、ということです。
現代人の多くは、あまりにも多くの物事にかかわるあまり本当に自分の好きなことができなくなっています。
「あれもやらなくてはならない」「これもやらなくてはならない」…。でも、本当はそう思い込んでいるだけで、やる必要のないことも多いものです。
色々な情報が飛び込んでくると、それによって私たちの心は乱れます。
では、どうやって「隠れて」生きればいいのでしょうか。
自分のできる範囲内で「心が乱される可能性のあるもの」から遠ざかることです。
テレビは見るのを控える、ネットサーフィンを控える、雑誌を読むのを控える、人とのつきあいを制限する、ウィンドーショッピングを控える…。
こうして「心が乱される可能性のあるもの」から少し距離を置くことによって、その分、落ち着いた生活が送れるようになります。それによって自分が本当に好きなことに打ち込めるようになるのです。
自分なりに「隠れて生きる」方法を探してみましょう。
それが見つかれば、それだけ落ち着いて暮らせるようになります。それこそがエピクロスのいう真の快楽なのです。