理性を磨く手段としての外国語学習、学問、資格、勉強の楽しみを語る

はじめに

私こそは、しくじり翻訳家である。

かつては年間3、4冊の翻訳書を当たり前のように出していたし、ベストセラーになったのも何冊かある。翻訳書オンリーではなく、著書も出してはいたが、それでも単行本の印税だけで10年以上生計がなりたっていたのだから、世間的に見れば、翻訳家としてそれなりに成功していたのかも知れない。

しかし、実情はといえば、けっして順風満帆ではなく、約束していたはずの印税のカット、発行部数のカット、出版時期の大幅な遅延、印税支払い期日の大幅な遅延、度重なる出版中止、訳者名の不表示(←これ著作権法違反だぞ! 刑事罰を受ける可能性すらあるぞ!)など、ありとあらゆるトラブルを経験し、裁判に発展したことも何度かあった。

saibansyoいずれの裁判でもそうだったが、人間の最も醜い姿をこれでもかこれでもかというほど見せつけられた。「え? あんな誠実そうな人がこんな真っ赤な嘘をつくの?」「え? 長きにわたり信頼関係を築いていたはずの人がこんな裏切り方をするの?」という驚嘆と憤りの連続だった。

その過程で徐々に私の精神状態はボッロボロのグッチャグチャになり、トホホ音頭を踊りまくる日々が続いた。まさにしくじり翻訳家の名にふさわしい。

では、なんでまたそんな私が今になって体験談を書こうと思い立ったのかといえば、書かざるを得なくなったから、というのが本音ではある。私の心の中に積りに積もったものを吐き出さずにはいられなくなったというわけだ。トホホ音頭を踊りまくるだけでは満たされなくなったのだ。

といっても、もちろん、私のしくじり経験が、これから翻訳家になろうという人の「転ばぬ先の杖」にでもなってくれればという真摯な願いもある。要するにこの体験談は「私にみたいになるな!」という私の魂の叫びでもあるのだ。たしかに私はしくじり翻訳家かもしれないが、それだけでは終わりたくないし、終わってはならないと思う。そのしくじり経験をプラスに活かして、私みたいな翻訳家が二度と生まれないように尽力したいのだ。そしてそうすることは私の義務の一つなのだ。というわけで、この体験談はこれから翻訳家になりたいという人に捧げるつもりで書こうと思っている。

ただ、出版社の人たちにも読んでもらいたいという気持ちもある。というのも、本来、翻訳家と出版社は手と手を取り合って二人三脚で仕事に取り組むべき関係だからだ。つまり、翻訳家がしくじるということは、出版社もある意味しくじっていることになる。実際、私に対して不誠実な対応をした出版社が、のちのち莫大な解決金を私に払う羽目になったことも何度かある。そういう意味では、私のしくじり経験を読んで、出版社にもしくじらないよう気をつけてもらいたいわけである。

私のしくじり経験が参考になれば幸いである(なお、僭越ながら、私が考えるところの出版社のしくじり経験も書かせていただいているので、これも合わせて参考にしていただきたい)。

未来の出版翻訳業界に幸あれ!

PAGETOP
Copyright © 知は力:名言 All Rights Reserved.
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.