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報酬の話をしない依頼者からの仕事は断ろう

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翻訳の仕事をしていると言っていると、たまにまったく無理難題をふっかけられることがある。

英国の大学院時代の女友達が、ある夜、困り果てて電話してきたことがあった。彼女とはプライベートでメール交換していた時期があったが、しばらくして彼女はメールを返してこなくなったので、自然消滅した間柄であった。深い仲でもなかったので深追いはしなかった。そんな彼女がメールではなく、電話をしてきたのだ。しかも深夜である。

当時、彼女は某大学の英語の専任講師、私は某英会話学校の講師であった。私は週に6日、1日8時間英会話の授業を担当していた。電車での移動時間なども含めると1日のほぼすべてが仕事に費やされ、自由時間はほとんどなかった。週に1日の休みも、ぐっすり眠っておかなければ体が持たないハードな仕事だった。

さて、彼女の電話の内容は次のようなものだった。

1ヶ月くらい前に上司にあたる教授から15ページほど下訳を頼まれていたのだが、翻訳が思ったように進まず困っていた。まだほとんど手つかずの状態だという。そんな折り、教授から催促の電話がかかってきて、「締め切りが来たのにまだやっていないのか、早くやれ」と怒鳴られたという。それでせっぱ詰まって私に翻訳を代わりにやってくれないかと泣きついてきたのだ。

私は彼女がその教授からお金を貰うことになっているのか尋ねた。するとお金の話はしていないという。

「ま、いくらかくれるんじゃないですか、これだけの量があるんですから」

まったく暢気な言い方である。ただ、彼女の立場を擁護して言えば、上司にあたる人物に対し、いくら払ってくれるのかとは聞きにくかったのかもしれない。

しかし、これがトラブルの原因の一つであることに間違いない。こういうことこそ、キッチリ聞いておかなければならない。立場の強い人間に好きなようにさせていてはいけないのだ。お金のことを決めておかなければ、あとから「あれは仕事として頼んだ覚えはない」としらを切られたらただ働きにさせられかねない。

私は納期について尋ねてみた。すると「できれば明後日までに訳してほしい」という。もう、まったく無理難題である。私がフルタイムで働いていることを全く考慮しない身勝手な相談であった。そしてこの時点で私が引き受けられる可能性はゼロになったと思った。

彼女は1ヶ月の間、誰かに相談することもできたはずだ。10日前でも9日前でも8日前でも、相談の電話ならいつでもできたはずだ。せめて1週間前にでも相談してくれていれば、なんらかの対応策も考えられただろう。しかしそれを一切しないでおいて、ずるずるずるずると翻訳するのを遅らせておいて、締め切りが来て教授に怒鳴られてから初めて私に泣きついてきたのだ。

私は「手助けしてあげたいのは山々だけれども、私はフルタイムで働いているし、とても2日で訳すことはできない」といって断った。

彼女としては、非常に冷たい人間のように思えたかも知れない。しかし無理なものは無理だ。こういう無理難題をなげかけてくるほうがおかしい。1ヶ月の間に彼女ができることは全部彼女がやって、その上で、自信がもてないところだけをチェックしてほしいというのなら分かる。それならばたとえ忙しくても一肌脱ごうという気にもなる。

しかし彼女は自分がやるといって引き受けた仕事を1ヶ月の間何もしないでおいてほとんど全部私に丸投げしようとした。それは怠慢というものではないか。

彼女は「お支払いはします」と言って私が断るのを必死に引き留めようとした。

私はこういった。

「でも、教授とはお金の約束していないんでしょ? 教授から貰えなかったらどうなるの? それでも私に払ってくれるの?」

「もちろん、やってもらった分はお支払いします」

「それだったら、別に私ではなくて翻訳会社に頼んだらどう? 翻訳会社に翻訳頼めば喜んで引き受けて貰えますよ。とにかく私はフルタイムで働いているので、そんな急に2日でやってくれって言われても無理ですよ。物理的に無理です」

「え? 翻訳会社に頼む? それって馬鹿らしいですよね。めちゃくちゃ取られるんでしょ?」

翻訳会社に払うのは馬鹿らしいと嘆いている彼女の言葉を聞いて、もし私が翻訳を引き受けていたとしたら、私にお金を払う気があったのか疑わずにはいられなかった。払う気はあったといっても、できるだけ安くやってもらいたかっというのが本音だろう。

その後、彼女から連絡が来ることは一切なかった。

ここで私が言いたい教訓は以下の4つである。

教訓1、翻訳を依頼されたら金額をきちんと決めておくこと。
教訓2、報酬の話をしない人からの依頼はキッパリと断ること。
教訓3、締め切りは突然やってくるわけではないので、締め切りまでに翻訳が終わらないと思った時点ですぐに対応策を考えること。
教訓4、他人に翻訳をやって貰おうと思えば、世間相場の対価を払うこと。

 

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