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外発的動機と内発的動機の違い

 外発的動機づけ内発的動機づけの特徴を多面的に比較し、その差異を明らかにしてみたい。

外発的動機づけの場合、他者(特に本人にとって重要な意味を持つ人)の是認を得ることが行動の目標となっている。例えば、小さな子供がお母さんに褒められたい一心で、本当は面白いと思っていない算数のドリルに取り組むとしたら、その子は外発的に動機づけられているといえる。

このような直接的な是認以外にも、テストで高得点を取るといった報酬や、物質的な報酬が行動の目標になることもあるが、それらも結局は他者からの是認を求めているのと同じである。なぜなら、そうした報酬を求めるのも他者から是認されたいがためだからである。

つまり、外発的な動機によって行動するのは、あくまで他者からの是認を得るための手段にすぎない。そして、だからこそ、遂行する行動の目標は外部基準に合うように設定される。言い換えれば、成功か失敗かは自分ではなく、他者に決められてしまうわけである。そのため、実際に行動している最中は、はたして是認が得られるかどうかという不安がつきまとうことになる。ただし、うまく達成できれば不安が解消もしくは低減され、それが報酬となりうるので、適度な不安を作り出すことも必要とされる場合もあるであろう。

一方、内発的動機づけの場合は、行っていること自体以外には明白な報酬はない。つまり、行動すること自体が目的なのであり、少なくとも他者からの報酬を求めることが目的にはなっていない。例えば、何の報酬も求めずにパズルに熱中したり、イラストを描くことに熱中したりする人がいるが、彼らは内発的に動機付けられた格好の例と言えよう。

ただし、厳密に言えば、まったく何の報酬も求めていないわけではない。実際は、他者からの報酬を求めていないだけのことであり、自らにその報酬を求めているのである。具体的には、その行為を行うことで何らかの快感を得ることを求めている。そして、だからこそ、遂行する行動の目標は内部基準に合うように設定され、成功か失敗かは他者によって決められるのではなく、自分が決めることができるのである。

内部基準に関しては、ベルリン大学の Kurt Lewin 教授らが興味深い実験を行っている。多くの被験者に簡単な課題を解かせた結果、客観的に見れば、たいした出来ではなくても、本人は成功していると感じている場合もあれば、その逆もあることが判明した。これにより、内発的動機づけによって行動する人が感じる成功感または失敗感は、客観的評価とはほとんど関連がないことが確かめられた。こうした自らの内部基準に照らして決める目標を要求水準という。

同じ実験で次のようなことも分かった。いったん成功感を得た人が再び成功感を得るためには、さらにレベルの高い課題に挑戦する必要が出てくるということである。このように内発的動機づけによって行動している人は、内部基準に照らしての成功・失敗によって要求水準を自ら調整していき、やがて現時点でのコンピテンスの上限に近づくわけである。

では、情緒的側面はどうであろうか。外発的動機づけによって行動している人が不安につきまとわれるのに対し、内発的動機づけによって行動している人は他人からの評価は最初から気にかけていないので、行動そのものを楽しむことができる

次に、内発的動機に結びつく快感とはどのようなものかを詳しく見ていくことにする。

内発的動機に結びつく快感に関しては多くの理論があるが、最も有力なアプローチは最適覚醒最適不適合能力理論の3つである。このうち、最適覚醒の理論は生理的な快感に焦点が当てられており、最適不適合理論と能力理論は、心理的な快感に焦点が当てられている。

ヘッブが唱えた最適覚醒の理論によれば、人間は最適の覚醒状態(身体的機能が最も効率的に働く生理的状態)への欲求を持っており、かかる状態に導いてくれる行動をしたがる。つまり、覚醒レベルが高すぎれば低める行動を、低すぎれば高める行動をしたがるわけである。

ヘッブはその例として、山で熊に出くわして恐怖のあまり覚醒レベルが最適状態を越えて高まりすぎると、逃走して覚醒レベルを下げようとするだろうし、逆に動物園のガラス壁を隔てて安全な位置から熊が目に入ってくれば、熊の檻に近づくことで覚醒レベルを高めようとするだろうと述べている。そうする理由は、最適の覚醒状態こそがもっとも快感が得られやすいからだというわけである。

ハントが唱えた最適不適合理論によれば、外発的に動機付けられた行動と同じく、内発的に動機づけられた行動も、ある種の基準からの食い違いによって始発される*(それらの基準は順応水準や期待である)。そして、自分の持っている基準との食い違いを解消しようとする。

例えば、ピアニストがピアノを演奏したとしよう。その演奏が自分の記憶にある一定の基準と照らし合わせて不適合であれば、彼はそれを解消しようとする。というのも、その不適合を解消すれば心理的な快感が得られるからである。

能力理論によれば、人間には「自分が有能で自己決定的であるという感情を経験したい」という欲求があるため、自分に相応しいチャレンジを求める。もしも退屈しているのなら、自分の創造性を発揮できる機会を求めるだろうし、逆に、重荷に感じていることがあれば、より適した機会を別のところに求めようとするだろう。そうした自分に合った機会を達成することで、自分が有能だという感じがもてれば、それによって快感が得られるからである。

いずれにしても、内発的動機づけによって行動している人は、自らのうちに何らかの快感を感じようとしていることには変わりはない。

以上、外発的動機と内発的動機の本質的な差異について述べてみた。

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