哲学の一部門に倫理学という分野がある。
私は複数の学問分野の勉強をしてきたが、哲学、その中でも特に倫理学は最も興味深い分野であったし、人間としてより良い人生を歩むには必ず勉強すべき分野だとも思った。
では、倫理学とは何か。
その定義を見てみよう。以下は各種の辞典・辞書からの引用である。
「ギリシア語のエートス ēthos (習俗,性格) に由来し,個人的にはよきエートスの実現,社会的には人間関係を規定する規範,原理の確立を目的とする学問」(ブリタニカ国際大百科事典)
「共同体における人と人との関係を律する規範・原理・規則など倫理・道徳を研究する哲学の一部門」(デジタル大辞泉)
「〈社会的動物〉としての人間のありよう(倫)から生起する規範たる道徳ないし倫理の種々相を検討する学の総称」(百科事典マイペディア)
「道徳・倫理の起源・発達・本質などを研究対象とする学問。その中心問題は道徳規範と善の問題である」(大辞林)
「世間で通用している道徳をそのまま受容するのではなく、それについて哲学的な反省を加え、どのような原理に従って生きるのが真に道徳的な生き方であるかを探究する学問。あるいは同じことだが、倫理学とは、人間はいかに生きるべきかを考え、人間らしく生きるためにはどのような生き方を選んだらよいかを探究する学である、ともいえよう」(日本大百科全書)
芸能人やスポーツ選手、政治家等の地位も名誉も財産も得た著名人が、自殺だの薬物使用だの不倫だの強姦だの窃盗だの詐欺だのをやらかして大変な騒動になることがあるのは、連日のように誰もが見聞きして知っていることである。
彼らは他の誰にもまねできないような特殊な才能に恵まれていながら、倫理観に欠ける行動に出たがために人生に大きな汚点を残す結末を迎えている。こうした例からもわかるとおり、倫理観を欠いていれば、たとえある特定の分野で秀でても良い人生を送るのは難しいのである。
こうした事件を見聞きするたび、倫理学を学ぶ重要性をひしひしと感じるのである。というのも、人間、一人で孤島で生きているるわけではないのだから、まわりの人たちと協調しあって(あるいは少なくともトラブルを起こさないように)生きなければ良い人生など送れるはずがないからだ。
哲学の勉強をしている私に「哲学なんか勉強してそれが何になるの?」という人がいる。たしかに哲学をいくら勉強したところで直接金儲けにはつながらないかもしれないが、哲学、その中でも特に倫理学は、人間としてより良く生きる上で最も重要な学問分野のように思える。